ふと疑問に思った
AMR対策とは抗菌薬の濫用をやめて適正使用することにより耐性菌を増やさないようにしよう!できるだけ耐性獲得のスピードを遅くしようというものである。
詳細はこのサイトがわかりやすい
ではAMR対策という言葉を歯科関係者はどれだけ知っているのだろうか?
という事を思ったので、それならTwitterでアンケートとってみればいいじゃない!
と早速実行してみた、という話。
結果
対象は歯科医師、歯学部生とした。
歯科医師だけだと人数に不安があったためである。
24時間でなんと700名以上が参加してくれた。
【拡散希望】歯科医、歯学部生の皆さんに質問です。
— spee@医療系サイト検証 (@spee_dentalblog) August 10, 2019
AMR対策という言葉を
60%が知らない
という結果になった。
低学年歯学部生が多く答えたかもしれないが、それでも40%しか知らなかったというのは大変ショックである・・・・。
歯科も例外ではない
私は感染症対策のエキスパートでも無いし、単なる開業歯科医である。
だから間違えたことを書いていたらご指摘いただきたい。
例えば歯科の疾患でクラビットなどのニューキノロン系を出す必要があるだろうか?
基本的にニューキノロン系を口腔内の疾患で使用する場合はほぼないと思う。
抗菌スペクトルが広すぎて口と全く関係ない菌を抑えることにより耐性を生んでしまう可能性がある。
実際ニューキノロン系を1週間程投薬するだけでもそれほど多くは無いが耐性を獲得してしまう。
アジスロマイシンやクラリスを長期投与しているという歯科医院も良く聞くが、これも好ましくないと思われる。
長期投与によりマイコプラズマが耐性を獲得してしまう。
マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎になるとニューキノロンの出番だがニューキノロンに耐性があったとしてそれも歯科のせいだったら???と思うと結構震える。
フロモックスやメイアクトなどの第3世代セフェムの経口投与は非常に吸収率が悪いので、この薬が効いてるのか自然治癒で患者の体が頑張っているのかよくわからない。
効かないから長期投与していれば似た構造を持つ抗菌薬への耐性は獲得してしまう。
こういった歯科による考えてるのか考えていないのかわからない抗菌薬投与により口の中の細菌に耐性が発生する。
しかし口の中以外の細菌にも耐性が発生するのである。
そして抗菌薬の開発スピードはどんどん鈍っている。
これが効かないから次はこれ、というのが安易に出来なくなってきている。
だから今ある薬に耐性ができないようにできるだけ注意した使用が求められる。
海外では通常の抜歯やインプラントには抗菌薬を出さない所も多くなっていると聞く。
北欧系の先生もこう仰っている。
こちらではP治療に抗菌薬はもはや死語ですねー。メトロニダゾールとアモキシシリンは基本セットだった時代もありますが完全に消え失せました。
— Dr. Shunの歯の話in北欧🇳🇴 (@ShunDDS_MSc) August 11, 2019
抜歯後やインプラントオペ後も基本抗菌薬投与はなしです。
歯科における感染症治療のガイドラインは以下のリンクとなる。
JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2016―歯性感染症―
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_shisei.pdf
単純な歯科治療なら殆どペニシリン系で十分である。
第1選択はアモキシシリン(サワシリン)
新しい薬じゃないかなら効かないとかそういうわけではない。
日本の場合、外科処置後に抗菌薬投薬をしないと返戻されたりというシステム自体にも問題があると思う。
今の海外の流れや耐性菌の状況からしても歯科の多くの処置では抗菌薬は積極的に投与するべきではないかもしれない。
そういった時代になってきていることを60%の人が知らないとすれば凄く残念な事だと危機感を持った次第である。
がんによる死亡者をいずれは耐性菌やウイルスによる死亡者が追い抜く時代が確実視されているんだけどね・・・。